久しぶりに韓国・ソウルに行ってきました。
もう何度この街にやってきたのかわからないくらい来ているんですが、年々スマートな街並みに変わりゆくのを感じながらもそろそろ定点観測スポットに行かないとと思い夜便発早朝便戻りという韓国渡航の人民列車ともいえる、村上さん的に言わせると「限りなく1泊に近い2泊」な、いつものやつです。
入国が異様に簡単なのも韓国のお手軽なところです。
インチョン空港入管にて。
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ソウル市内には今時は電車が直通しているのですが、やはり昔ながらの「一般ボス」で行くのが風情があって好きです。ボスといっても、YAZAWAバンドのサックスのスネイクさんがYAZAWAに飲みにつれて行ってもらったバーで「ボス、ここで吹いてもいいですか?」と訊く、そのボスではありません。韓国訛りの「トラべリンバス」のこと。
要約すると空港から市内までバスで行きました。
いつもは大体中心地の旅館(モーテル)に潜伏するのですが、今回は観光や送迎のない(コレ大事)ツアーパックがお得だったので宿も付いていて、2泊3日往復で15000円みたいなやつ。しかし飛行機の会社や時間、ホテルの場所が渡航の1週間前になるとわかるというロシアンルーレットのようなシステムで、清涼里(チョンヤンニ)というソウルの東側だったので直通ボス(ボス、ここで吹いても・・・ではない)に乗り込んで70分くらいで清涼里に到着。この時点で24時超過。
このエリアは来たことはあるけど潜伏もしたことない上に深夜ということで静まり返った景色(編注:行くとこに行けばメンズワールドとして活気はあるはずです。)
大陸性気候独特の底冷えの中、屋台で韓国式焼き鳥「コチ」と焼酎で初日は撃沈。
起床とともにソウルの西側エリア、西大門(ソデムン)に向かいます。
「ハノッチ」という大好きな昼飯屋があるのです。
自家製の古漬けキムチをもとに、チゲ(鍋)とチム(煮込み)を出してくれます。
キムチチゲ
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キムチチム
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8か月は熟成されるというキムチのコクと豚肉の風味が食欲をそそります。
特にこのチムという煮込みはホロホロな柔らかい肉で、各種の旨味がショート寸前な感じ。
シチューとかトマト煮とかそんなヨーロッパやスペインの街並みが頭をよぎることも可能です。
チーズとかトマトとか合いそうだな、シバかれそうだけど。
食後、鐘路3街に行く。楽器屋街は少しづつ洗練されています。以前は、中古ピアノにハケでペンキを塗りながら海苔巻食べている店主とか、PAセットで爆音のトロット(韓国歌謡曲:日本の演歌の元ネタになっている)のカラオケがエンドレスで流れて、近所の老人が踊ったり、それを見物しながら薄い韓国ビールを飲むという楽しみがあったのですが、今はどうなんでしょう、2階しか行かなかったのですが、どうやら他のフロアはまだまだヤバいみたいです。
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そして廣蔵市場(クヮンジャンシジャン)に繰り出します。
韓国はいろんな食べ物がありますが、いつも心の上位ランキングにあるのが「ピンデトク」というもの。
要はチヂミなんですが、小麦粉とかではなく小さな豆を石臼で潰して、それを生地にして白菜の細切れを混ぜて油で揚げ焼きするという、名前通り「貧しい餅」という安い屋台料理。
ここクヮンジャンシジャンの通りの真ん中を占拠する屋台の多くがピンデトク屋台なのです。
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酢醤油に生タマネギという、それだけで健康オタクの常備菜みたいなタレにつけて食べるピンデトクは外はカリカリ中はホクホクで、豆と野菜の強い香りが油でブーストされて軽いオーバードライブがかかっている状態です。これにはマッコリが合います。
ペットボトルで流通するソウルのナンバーワンブランド「長寿(チャンス)マッコリ」でコレを流し込む午後のひととき、言わばカフェタイムなのです。
ピンデトク1枚4000W、マッコリ1本3000Wで二人で楽しめるくらいの音量です。
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昼から照明も人も電圧220V、どうやらこの街の背景には電圧が関係しているようです。
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衣服、食糧、日用品を売る有名市場、しかし食べる人、飲む先輩が多いです。
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大通りの間にはたくさんの路地がありますが、それぞれ専門店通になっていて、ここはユッケ通り。
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ユッケと焼酎、チェイサーにビール。ブランドはCASS(カス)、ライトビールの中でもひときわ薄めな韓国ビールは、中国サントリーやアメリカのバドライトが大好きなワタクシにはすごく口に合います。
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ユッケ屋が並ぶ路地の中ほどの特に賑わう店で頂きましたが、綺麗な赤身肉をアジュンマ(おばさん)が軍手を真っ赤っ赤にしながら薄切りにしてゆくマニュファクチュア実演を見ながら青唐辛子を味噌につけて食べたら大当たり。
唐辛子には凄く辛いのとあまり辛くないのと2種類あるんですが、そんなに辛くないのを食べていてもたまに当たるんです「とんでもない辛いやつ」に。いわゆるピーマン系によくある「先祖がえり」という現象で、シシトウでもたまに当たるでしょ、それの強力なやつです。ルーツを大事にしなさいと言われているような気分になる深読みソウル。
そんなときには水もビールも絡みがブーストされるだけ。そう、特効薬は焼酎、すっと治まりますが治めるために2杯は飲むので(しかも韓国は基本一気、梶原一騎の最後の妻は台湾人、余談です)顔が赤らむ。そして懲りもせずまた唐辛子をかじる。の無限ループの意味は店内で真昼間から盛り上がる諸先輩方を眺めれば一目了然です。
盛り上がりましたが、一旦宿界隈に戻って、コーヒーでテンポを落としてトーンを絞ろうとしたら清涼里伝統市場(チョンヤンニチョントンシジャン)を発見。
手元もアンプも一気にフル天になります。
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ピンデトクやユッケを食べたクヮンジャンシジャンも素晴らしいのですが、言わば築地とか黒門市場とか魚の棚とか、そういうニュアンスを含む場所なので、どこかローカルな市場ないかなぁと思っていたので嬉しくて嬉しくてとても宿に帰る気がしなくなり暗くなるまで広大な市場エリアをグルグル深呼吸しながら徘徊しました。
アーケード付きのエリアと青天井のエリアが混在して、道も湾曲しているので結局全貌は掴めなかったものの、生鮮食料品、屋台飲み屋、卸売生活品なんでも揃う雑多な感じは「生きる強さ」溢れる素晴らしい風景でした。
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少し離れるとこういう路地も多いです。朝鮮式家屋に混じって日帝時代の日本家屋もまだいくつか残っていました。リヤカー、三輪バイク、でも美観保存しているわけではなくただの日常。
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歩いているといろんな匂いが5.1chサラウンドで目の前に覆いかぶさってきます。音楽的な街、韓国。李リトナー、チックコリア、どうもフュージョンっぽいが。余談です。
「母さん、あの匂いはどこにいってしまったんでしょう!?」と記憶のある匂いで振り向いたら焼きアナゴの屋台飲み屋でした。
白焼きのパダチャンヲ(アナゴ)を積んであって、注文を受けたらそれにヤンニョムタレを塗って網焼きにして出してくれます。
愛川欽也似のハルモニ(おばあさん)が一人で切り盛りして、強力なセンパイ達を適当にイナしながら焼いてくれたアナゴ焼きジョナさんセット。アナゴ2匹、マッコリ1本つけて13000W。
韓国の沿岸は砂地が多いので当然アナゴが美味しく、我が地元瀬戸内海のアナゴにまったくヒケをとらない素晴らしい風味でした。
味噌つけて葉っぱで巻いてもアナゴ感が強く残る、いい体験でした!
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デザートにアンコ入りホットク(韓国式ドーナッツというかホットケーキというか)
この直後に「うんこ」が大量に出ました。余談です。
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この後、少し休んでから再び鐘路3街へ。
久しぶりにピマッコルという路地にあるマッコリ屋さん「コカルビチプ」へ。
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鐘路とインサドンの間にあるこの店の界隈、再開発でもういつ無くなるかわからないような状態と聞いていたので不安になりながらやってきましたが、他の店が閉まっている暗い路地の中、ここは営業していました。
どう考えても平屋のバラックを無理矢理2階建てにして1階を店舗、2階をマッコリ酒蔵にしている非常に天井の低い造りはそのままに、名物ハルモニが迎えてくれます。
注文は不要で、人数を言って案内してもらって座ったら自動的にこのセットが出てきます。
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金タライに入って出てくるハルモニ自家製の生マッコリは、清涼感とコクが同居する甘酸っぱい味で、カルピスソーダにヨーグルトを足したような自家製ならではの美味しさ。
アルコール度数は体感せいぜい5~6パーセントくらいで飲みやすく、セットのホッケ焼を粗塩で食べながらマッコリを飲んで、、、、、また無限ループです。
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閉店時間間際で、最後はお客はワタクシだけになりましたが、ハルモニが話しかけてくれました。「あんた!!前にしょっちゅう来てた日本人でしょ?今回は久しぶりだね~、相変わらず美味しいでしょ?ゆっくりしていきなさい」と言っている。
学生、若いサラリーマンや軍人が街で安く飲める店として長い間愛されてきたお店だけあって、さっきまで隣に居たそれなりに身分のある中年男性団体たちも若いころを懐かしんでハルモニに会いに来てました。
、マッコリの量すごく多くてセットで1人前8000W程度という破格を貫いてくれている心意気がついつい贔屓にしてしまいます。
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朝4:30にはホテルを出ないと始発に間に合わないので、チョンヤンニに帰って駅からホテルに戻るところで裏路地を通ったがためについ立ち寄ってしまった鍋屋。
タラ鍋で打ち上げてしまいました。
旨いが辛い、だから焼酎で治める。そして旨い、が、辛い。 無限ループ民国。
タラ、白子、セリ、冬の韓国に来て鍋を食べるのはほんと何よりも旨いと感じます。
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そして結局30分だけ横になって、そのまま一般トラべリンボス(ボス、ここで吹いてもいいですか?ではない)に乗り込んでルイジアナではなく成田を目指しました。
チョンヤンニチョントンシジャンでいくつか買っておいたアタッチメント類を眺めながら、ニヤニヤ。 生ゴマ油をついにゲットしたので食卓の様相がすこし変わりそうです。
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上海行ったり、ニューオリンズ行ったりしててソウルが手薄になってしまっていましたがワタクシの大事な定点観測スポットなので今年は何度か遊びに行けるといいなぁと思っています。
ディープコリアの世界はもう消えたのか?なんて案ずるなかれ、まだまだ探せるなぁと思いました。
チャルモゴスミダ!